報せに泳いでは、その終わりに。

テレビもスマホも静かになったこの時間、さっきまでは聞こえなかった彼女の声が聞こえる。彼女の、文字を読む声だけが聞こえる。

近頃の娯楽といえば、インターネットに映画やアニメのサブスク、あとたまに地上波バラエティ。
なんとなくの習慣で、見るともなくSNSを開き、耳だけはぼんやりとテレビの音を拾っている。
特に興味があるわけでもない、流れ始めた知らない映画。SNSではお気持ち文章がバズっている。
このおすすめっていうの、何を根拠に「おすすめ」してくるんだよ。
どこかで見たような言葉の羅列に目を通しながら、雑音になりかけてきた映画へたまに目を向ける。

世の中は情報で溢れている。自ら探しに行かなくても「あなたはこれで楽しんでください」と言わんばかりに押し付けられるコンテンツの数々。
今自分は何を見ているんだろう、何を聞いているんだろう。鬱陶しくなってテレビを消した。スマホも一旦横に置く。
目を閉じて、ぼんやりする。明日の仕事は何から手をつければいいんだっけ、そうだ、会社に行ったら明日はまず……。

そんな思考を遮るように、声が聞こえた。
隣の部屋で雑誌を読んでいた彼女の声だった。
テレビもスマホも静かになったこの時間、さっきまでは聞こえなかった彼女の声が聞こえる。
雑誌の記事を読んでいるようだ。
彼女の、文字を読む声だけが聞こえる。
それだけの空間がなんだか心地良くて、再び目を閉じた。

一旦考え事はやめよう。今はこの声に、ただ身を任せることに決めた。

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